2008年07月23日

下着の中の秘蜜 3(全4話)

下着の中の秘蜜 /佐伯絵里
3:夫に言えない秘密2


専務がうちに泊まりにきて私が夫に内緒で専務の精液を飲んであげたことで、その後の運命が変わったと言ってもいいだろう。
早速、翌日の昼に家の電話が鳴った。
「奥さん。昨晩はありがとうございました」
「……専務さん。電話は困ります」
「私ね。これからは、鈴木君を飲みに連れまわすのを、控えるようにしますよ。鈴木君も夜はあなたのような若い奥さんのもとへ早く帰りたいでしょうからね。私も飲みすぎて、鈴木君に、よけいことを口走ったりしてもいかんしね」
「……そんな。私、何も覚えていないんです」
「そうですか。じゃあ、昨晩のお返しに、食事をご馳走させてもらえませんか」
「えっ……夫も一緒にですか」
「あなたは、鈴木君が一緒のほうがいいの?」
「……いいえ。そう言うわけでは……」

専務は、夫に遅くまでかかる残業を命じて、その間に、私とホテルのレストランで会った。
ホテルの部屋の鍵がテーブルの上に置いてあった。
「奥さん。鈴木君はよくやってくれていますよ。来年は昇進を考えています」
「本当ですか」
「……本当ですよ。昨夜、おたくにうかがって印象がよかったのでね」
専務は私の顔ではなく、胸元を見ながら話していた。
「どうですか、部屋でゆっくり話しませんか」
「……」
いつまでも黙っている私に、専務の言葉は露骨になった。
「奥さん。昨夜あんたぐちょぐちょに濡らしていたじゃない」
「……」
「また泊まりに行って、今度はおまんこの中に出させてもらますよ」
「そんな」
「処女で結婚したんでしょ。鈴木君が酒に酔って自慢していましたよ。あのくそ真面目な鈴木君としかやってないんでしょう。ならば、変な病気の心配もないから生で中出ししてもこっちはぜんぜんかまわないし。妊娠しても鈴木君の子としか思われませんよ。だって毎晩のようにしているんでしょ」
夫の口の軽さと専務の卑劣なやり口への怒りがこみ上げた。
「言うこと聞いてくれれば、きちんとスキンをつけますよ」
断れば、昨夜のことを夫にしゃべるかもしれない。
そう思うと、最後には
「……これきりにしてくださいね」
とだけ言って、専務の脅迫に屈してしまった。

専務とのセックスはしかし最悪だった。
私の体を全て舐めてくれるサービスをしてくれたが、私にはただ不快なだけだった。
「濡れてこないな」
専務は不満を漏らした。
弟の自慰を手伝ったあとは、あんなに濡れていたのに、今は、私のあそこは乾いたままだった。
私の股間に顔を埋めて専務が舌で奉仕してくれても、私の中に快感は湧いてこなかった。
専務は私の性器を指で愛撫しながら、強引に舌をからめてのキスしてきたが、私の家で夫がトイレに行っている隙にキスされたときの、体に電気が走るような感覚は起きなかった。
専務は自分でペニスをこすって勃起させ、私の性器に挿入しようとしたが、スキンをつけて違和感を増した半立ちの中年の頼りない男性器を私の体はどうしても受け入れることが出来なかった。
最後は疲労と不快感が専務の表情に表れはじめた。
「奥さん、口でしてくれないか」
最後には、スキンを外しながら、湿った半立ちのペニスを私の口に押し付けてきた。
気分を害した中年男をフェラチオで射精させるのには膨大な時間がかかった。
ついに、専務は射精するために自分でこすり始め、半立ちのまま、私の口の中で射精した。
精液は苦いだけだった。

一度きりという約束だったが、専務のやりかたは卑劣で老獪だった。
夫がまとめた契約の慰労会と言う名目で、取引先の小林商会という会社が私も食事に招待してくれた。
呼ばれたフランス料理店に行くと夫の上司として専務も来ていた。
専務と夫が並んで座り、取引先の社長の小林の横に私が座らされた。
専務が夫の気をひいている隙に、小林の手が私の膝に伸びてきた。
すべては専務の策略かと思ったときはもう遅かった。
さすがに、席を立って帰るわけには、今更、いかなかった。
私は、夫に気付かれないように、表情を変えずに、小林のいやらしい指の感触を我慢した。
専務が夫に会社への電話を命じて、夫を廊下に出した。
3人になると早速、紳士づらをして高級スーツを着た二人のすけべな中年が打ち合わせをはじめた。
「小林社長、もう奥さんのパンティの中はびしょびしょでしょ」
「いや、このご婦人は股を開いてくれないのですよ」
「それはいけませんね。奥さん。どうせ濡れているのはわかっていますよ」
「……」
「濡れたパンティーでは気持ち悪いでしょ。脱いじゃったらどうですか」
「それはいい。そうしたら、今日の記念に私にくれませんか」
「……困ります」
「大丈夫、社長。鈴木君に言えば奥さんに頼んでくれますよ」
夫に知られたくないという私の弱みを突く卑劣な脅しだった。
屈辱感と怒りで頬が赤くなった。
しかし、私の口からでたのは
「トイレに行かせて」
と言う言葉だけだった。
「ま、しかたがないか。ここで脱ぐのは目立ちすぎますからね。そのかわり、速くしてください。鈴木君より早く戻ってきて社長にパンティを渡してくださいね」
トイレの個室で惨めな気分で、下着をぬぐと、予感通り、ひどく濡れてしまっていた。
まるでおしっこを漏らしたような異常ともいえる愛液のあふれかただった。
男の獲物として狙われると、恐怖でアドレナリンを分泌するように、愛液を分泌してしまう癖が私にはあるようだった。
ノーマルなセックスでは、全く濡れないのに、認めたくないが、男におもちゃにされると、興奮してしまう性癖のようだった。

席に戻ると、有無を言わさず、小林にパンティーを奪われてしまった。
パンティーは手のひらの熱で乾かそうとしたが、まだ湿っていた。どうせこれをネタに下品なからかいを受けるだろう。
それとも、後日に脅迫の材料として使われてしまうのか。
電話から戻った夫は、私のほうを見ようともせず、忠実な部下の顔で専務に何かを報告し始めた。
夫の姿はさもしい犬のようだと思った。





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2008年07月16日

下着の中の秘蜜 2(全4話)

下着の中の秘蜜 /佐伯絵里
2:夫に言えない秘密


結局、私は、高卒後少しOLをして、親が決めた相手と20歳で結婚した。
処女での結婚だった。
相手は、鈴木という真面目だけが取柄のサラリーマンだ。
夫との初夜が、私には初めてのCだったが、弟で訓練してBを指でするのは上手なんて言えないから、ウブなふりをした。
夫もセックスは経験があまりなかった。
弟の自慰ですら、クライマックスまでに、いろいろな変化をつけて楽しんだのに、夫は前戯で快感を高めることもしなかった。
申し訳程度のキス。そのうちそれさえしてもらえなくなって、横になるなりのしかかられて無理に挿入され、すぐに射精された。

私の体は少しも濡れず、女を喜ばせることに怠惰な夫を憎んだ。
はっきり言えば、弟と秘密の遊びをしていた頃のほうがマシだった。
弟のペニスをさすってあげたあと、カーテンを閉めて自分のベッドに潜りこむと、私の股間は必ず濡れていた。弟に気付かれないようにそこを指で撫でると、体中の毛が逆立つような快感が走ったものだった。

そんな新婚ブルーとでもいう状況で、夫の上司の専務が家に遊びにきた。

専務がなぜ、うちに遊びに来たのかは判らない。
今になって思えば、鈴木が文句も言えない性格であるのを見越して、最初から、私たち夫婦を軽く見ていたのだろう。
その専務自身も、夫と同じような中肉中背の特徴のない外観で、話が面白いわけでもなく、およそ女にもてるようなタイプでは無かった。
ただ、専務の心臓には毛が生えていた。
夕食が終わる頃、食卓の下で、夫の隙を見て、いきなり私の手を握ってきたのだ。
このとき乱暴に振り払うこともできた。
声を出して、専務に恥をかかせてやってもよかった。
でも、騒ぎを起こすことで夫と専務、夫と私の間で発生するであろう面倒を考えると、うんざりした。好きになれない夫への反発もあった。
専務がスケベな眼で私を見ていたことにも気付かない夫が悪いと、自分に言い訳して、中年の油ぎった手をそのまま気付かぬフリをした。
夫がトイレに行った隙に専務は私にいきなりキスをしてきた。
驚いて抵抗もできなかった。
専務は私がじっとしているのをいいことに、舌を入れてきた。
はじめて経験するフレンチキス。
相手が誰でも、気持ちがいいものだと知った。
中年の専務の顔を見たくなくて眼をつむった。
気付くと、胸を揉まれていた。夫よりも、タッチがソフトだった。
気持ちがいいので、眼をつむったまま、身を任せていると、今度は、パンティの中に指を入れてきた。
「濡れている」
専務にそう言われて、生の指の腹でクリトリスを触られたとき、背中に電気が走ったような感じがした。

その夜、「泊まって行ってください」という夫の外交辞令を良いことに、専務は本当に我が家に泊まった。
客など泊めたことがない狭い家なので、いつもは開けてある和室の続き部屋のふすまをとじて、隣の部屋をつくりそこに布団を敷いて寝てもらった。
実家で弟とカーテンで仕切った部屋を思い出し、胸騒ぎを覚えた。
夜中に案の定ふすまが開いて専務が忍んできた。
私を奥に寝せることもせず、いびきを掻いて平気で寝ている夫の鈍感さになぜか無性に腹が立った。

専務は、そろそろと這ってきて私の布団に畳に横になったまま手を入れてきた。
私はただ寝息をたてているふりをして仰向けでじっとしていた。
しかし自分でも股間がぐっしょりと濡れているのがわかった。
専務の指がパジャマの上のボタンをゆっくり外し、私の胸をソロソロと優しく撫でる。
声が出そうだった。気持ちが良くて。
その快感に耐え、寝息をたてる。
専務は急がない。しつこく乳頭を指の先で撫で回す。
声を出しそうになったときに、ようやく、しつこい愛撫が止み、指は一寸刻みで臍のほうへ動いていった。
くすぐったい。
ついに、パジャマのズボンのゴムをくぐってしまった。
自分の指でパンティがどのくらい濡れているか確かめたいくらいに、濡れてしまっているのがわかった。
専務の指は性器の入り口を探ろうとしていた。このままでは指を入れられてしまう。
たまらずに、寝返りを打って専務に背中を向けた。薄明かりの中で隣の布団で寝ている夫は、だらしなく腹をだして眠りこけていた。
専務の手はパジャマの中に入ったまま離れず、私の体の回転とともに専務の手で腰を抱かれる形になった。
専務は私の布団に入ってきて、背後から自分の腰を私の臀部に擦り付けてきた。
私が静かにしていることを確かめると、専務は自由な片手で私の手を掴み、自分のパジャマのズボンの中に導きだした。
すでに、アレは固く勃起していた。
専務は私にペニスを持たせてその上から自分の手を添えゆっくりと摩擦を加え始めた。
弟の自慰の手伝いが脳裏に蘇ってきた。
闇の中で心臓の音だけが大きく響く。
専務は我慢がきかない弟とは違って、時間をかけてマッサージの感触を楽しんでいた。

時間が経つうちに、現実的な心配がだんだんと頭を占めはじめた。
このまま射精されたら、専務のパンツは誰が洗うのか。
明日は会社なので、夫と一緒にそのまま出勤して、コンビニで新しいパンツを買うのだろうか。でも、新品のパンツを穿いて帰って専務の奥さんはどう思うだろう。
私のそんな考えを読み取ったように、専務は私の肩に手を置き、ゆっくりと私の体を自分のほうに向けて、ひたすら寝たフリをしている私の体を布団の中に沈め、勃起したペニスをパジャマの外に取り出して私の顔の頬のあたりに、こすりつけ出した。
顔にかけようとしているのだろうか。
そうだとすれば困る。顔は洗えば夫に知られないだろうが、布団の中で射精されたら跡が残って困る。
専務の手が私の顔に延びてきて、指で唇を開かせた。
専務が何を望んでいるのかは、弟の相手をしてあげた経験上良くわかっていた。
とっさに家の布団を汚されるより私の口で受け止めるほうがいいと判断した。
寝ぼけて夫と間違えているふりをしながら口を開いた。
「あなた、むにゃむにゃ」
専務は自分でしごきながら、口の中にペニスを突っ込んできた。
実は夫にはフェラチオもしたことがなかった。夫が望まなかったのだ。
口内射精は弟で何回か経験していた。弟の精液は飲んであげていたが、専務のは口の中にためて洗面所で吐き出せばいい。
しかし、弟とは違い、この人はなかなか発射しなかった。
むしろ、専務の50歳代という年齢のせいか、口に入れてあげたのに、だんだん勃起が弱くなってきたように思えた。
だんだん、私はあごが痛くなってくる。
そして気になるのは夫のいびきが先ほどから静かになってきている。
覚悟を決めた。夫にこの状態が見つかるよりは、はやく発射してもらうほうがまだましだ。
口をつぼめて、ペニスを思い切り吸ってあげた。
指で、会陰部と睾丸をなでる。
弟と試して体得した必殺技だった。
もう一方の手で専務のアナルのまわりも撫でてあげた。
口のなかでようやく専務の半立ちのペニスに力がよみがえってきた。
専務は、いきなり私の頭をかき寄せ腰を振った。
数回の摩擦で専務はあっけなく私の喉で射精した。
ぐ、ぐ
声は堪えたが、やはり苦しくて涙がでた。
専務は深い溜め息をつくと、脱力しきった声を潜めて
「ありがとう」
とささやき、隣室へ戻って行った。
しかし、これで、終わったわけではなかった。
むしろ、このことからいろいろなことが始まってしまった。





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2008年07月09日

下着の中の秘蜜 1(全4話)

下着の中の秘蜜 /佐伯絵里
1:親に言えない秘密


夜になると、カーテン一枚隔てた隣を意識するようになった。
そもそも家が狭かったのがいけなかった。

東京、台東区のせせこましい住宅街の庭も無い古いマッチ箱が私の家だった。
そこに、病床の祖母と、平凡な会社員の父と専業主婦の母、そして、17歳の怠惰な高校生の私とにきび面の中学2年の弟が住んでいた。
西日しか射さない二階の十畳間をカーテンで二つに仕切って弟と使っていた。

私は処女だった。
偏差値のたいして良くない私の学校は、女子が男子の二倍もいて、その男子も私に輪をかけてぬるい奴ばかりだった。
私がちょっとはいいかなと思う学校の男の子は、バンドをやっていて私以上に馬鹿な女の親衛隊がついているか、そうでなければ暴走族に入っているかだった。
そんなわけで、私の身近には夢中になれる男もなく、現実の彼氏もなく、二度しか話をしたことがないミュージッシャンのMさんへの片思いで、湧いてくる恋のエネルギーを無駄に消費させるしかなかった。

弟は、少し前から、私に気付かれないように、自慰をしていた。しかし、気をつけているとそれを始める気配やイクときの息遣いが分かり、弟の体温の上昇とともに男の匂いも伝わってきた。
ある夜、いつものようにトイレに行くために弟のベッドの脇を通ったら、栗の花の匂いがした。性に関しては奥手だが、その匂いの意味くらいは知っていた。

そのうちに、弟は、だんだん大胆になった。ティッシュを箱から引き出す音、荒い息遣い、ときには夜中にかすかな呻き声を上げることさえあった。
しかし、弟に注意するわけにも行かず、親に言いつけることもできず、ただ住宅事情の悪さを恨むことしか出来なかった。

ある夜、消灯後しばらく経って、ためらいがちに弟が声をかけてきた。
「お姉ちゃん。寝ている?」
「……起きているけど」
「頼みがあるんだけどさ」
「……なに」
「父さん達には言わないでくれる」
「……なによ」
「俺がオナニーしているの知っているでしょ」
声は潜めていたが、強い調子の言い方だった。布団の中で、私の胸は早鐘に変わった。
「そんなの、知らないわよ」
「嘘だ。お姉ちゃん、このごろ寝ずに聞き耳たてているじゃん」
「そんなことないわよ」
「知っているよ。でもさ、オナニーって悪いことじゃないんだって。先生も言っていたよ。してもいいってさ」
「そんな話、私にしないでよ」
「実はちょっと前にさ、俺、お姉ちゃんのさ」
弟は言いよどみ、一瞬、静寂が訪れた。
階下からは、かすかにテレビの深夜映画の銃声が聞こえていた。
「何よ。言ってよ」
弟の声は一層低くなった。
「お姉ちゃんの寝ているときに、そっと胸に触っちゃったことがあるんだ」
私の頭は一瞬真っ白になる。
「う、嘘でしょ」
「ごめん。でも、そういうのってまずいからさ、俺、健全にオナニーして発散することにしたんだよ」

そういえば思い当たることがあった。
数日前の夜中、胸のあたりに変な感触があって、半分意識を取り戻したのだ。
脇をみると弟の顔があったので、何だ弟かと思ってまた寝てしまった。
朝起きて、変な夢を見たと思ったが、あれは、現実だったのだ。

「お姉ちゃん。怒ってる?」
「……」
どう答えていいか考えているうちに、弟は甘えた声になった。
「ね。お姉ちゃん……」
昔からの頼み事をたくらんでいるときの癖だ。
また触りたいというのだろう。
私も、いい子の優等生というわけじゃないけど、弟はタイプじゃない。
弟が、Mさんくらいのルックスだったら、いくらでも触らせてあげるのだが。
二度と弟が忍び込んできたりしないようにはっきり話をつけるしかない。
私は顔を見て話をするためベッドから出てカーテンに手をかけた。
「ねえ。カーテンあけるよ」
弟のところは私のところよりうっすらと明るい。
曇りガラスの窓の外から、街路の水銀灯の光が入ってきていた。
弟はベッド毛布を肩まですっぽりかけてこちらを見ていた。
その顔から私の知っている子供っぽさは消えていた。


音を立てないように弟のベッドの脇にしゃがみこむ。
「あんた、もう私の胸を触ろうなんて考えないでよ」
弟は、照れた笑いを漏らした。
「判ったよ。もうしないよ。……それでさ、お姉ちゃん」
「なによ」
「男のペニス見たことある?」
「なに言い出すのよ」
弟は下から私の目を熱っぽく見つめていた。
「見せてあげるよ」
言うなり、毛布をぱっとはいだ。
弟は全裸で寝ていた。まだ完成していない少年の体だった。
「きゃっ」
「こうすると、気持ちがよくなるんだ」
弟は、右手で、わずかな茂みに佇立する白い肉筒をこすり上げ始めた。
私は、予想していなかった展開に、どう対処していいのかわからず、ただ、初めて見る勃起した中心部から目を離せなくなっていた。
予想をはるかに上回る事態だった。
逃げることも、声を上げることもできずに、ただその場に固まっった。
勃起は、弟の手の動きとともに、ますます固くそびえるように見えた。
「お姉ちゃん」
「……何よ」
「触ってもいいよ」
言葉と同時に、私の手は弟に鷲_みにされ、白い塔を握らされていた。
肉の硬度は私の予想を超えていた。
保健体育の知識がなければ、そこは骨としか思えなかった。

「か、堅いのね」
「うう」
「どうしたの。痛いの」
「そうじゃなくて」
弟は目をつむり、苦痛に耐える表情をしている。
私の手は弟に導かれ、すごいスピードで肉の筒のピストン運動を手伝わされていた。
「ねえ、お願いだから」
「なに」
「だから、口でして」
一瞬、弟の言っている意味が判らなかった。
意味を理解して、また私の頭は真っ白になった。
「お姉ちゃん、お願い」
「どうすればいいの」
「もっと、こっちへ来て。上から覗き込むようにして」
私は、弟に頭の後をつかまれて、顔をピストンの真上に導かれた。
「いや」
「目をつむって、口を開いて」
もう弟にブレーキは利かなかった。
私の心の中では恐怖と好奇心がせめぎあった。
どんな味なのかを知りたい興味があった。
結局弟の言うことをきいた。
口を開いて、真上から弟の白い肉の筒を口の中に入れた。
「いいよ。お姉ちゃん。口の中で柔らかく締め付けて」
放っておけば、どこまでも、喉の奥までも入り窒息させかねない太い異物の侵入を途中で阻止するためには、その通りにするしかなかった。
口をつぼめると、それは火傷しそうな熱の塊だった。
弟は初めて聞く声で呻いた。
「うううう」
口の内側で締め付けると、とたんに発射した。
びゅ
喉にかけられた。
「ぐえっ」
胃の中から吐き気が込みあがってきた。
耐えられずに、口からに肉筒を出した。
口から白濁液が糸をひいてこぼれ、口の外にでた弟の肉筒の先端は精液でぬらぬらと光っていた。
私は、傍に置いてあった箱からティッシュを掴み取って、口の中に突っ込み汚された痕をごしごしとぬぐった。味はよく判らなかった。
「お姉ちゃん。ごめんね。ありがとう」
私は、今更手遅れなのに、ティッシュで口をぬぐいながら、弟を睨みつけていた。
「今度から、出すときには言って」

親に知られないように、それから、ときどき、弟の自慰を手伝った。
弟には私の体に触らせなかった。
処女は好きな人か結婚相手にささげるものと決めていたから。
弟のことは男として好きになったわけではない。
狭い家で弟に襲われないようにするための性欲の発散のためと、私は自分に言い訳していていた。
でも、私の気持を支配していたのは男への好奇心だったと思う。
それに、彼氏もできず、暇だったし。





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2008年06月18日

群青のアオ 6(全7話)

群青のアオ /辺未明
6:観覧車


「あれ!あそこに行こう」

 振り返った朝香美代子(アサカミヨコ)は子供のようにはしゃいで、笑っている。
 桜木町の駅を出てすぐ。遠くに見える観覧車を指差しながら。
 平賀甲斐(ヒラガ カイ)は嬉しそうに頷いて、差し出された綺麗な手を躊躇なく取った。
 生憎の曇り空の下。
 人込みに紛れて、二人は歩き出した。

 あの日――。

「…今度の土曜日に、デートしようか」

 人騒がせな出来事のあと唐突にヨコハマデートを発案したのは美代子だった。
 長いような短いような、キスのあと、ぼんやりと美代子を見ていた甲斐は、言葉の意味をよく理解出来ないでいたのだが、つい、頷き――。

「約束ね?予定入れたら許さないからね」

 笑顔で念を押されて、ようやく気付く意味。

「…え?デート?美代子さんと」

 そうか、デートなんだ。

 何処へ、ではなく。
 美代子とふたりきり、その事実が甲斐には嬉しかったのだ、が。

「でか…、コレに乗るの」

 呆然と、天を仰ぐ。
 下から見上げる観覧車の大きさに、甲斐はかなり怖気づいていた。

 …駅から見えるんだから多分でかいと想像はしていたけど、こんなにでっかいのかっ!

 巨大な観覧車へと続く、目の前の階段をみつめて軽く唸った。
 軽度の高所恐怖症だが、出来れば乗りたくないというのが素直な感想である。が、しかし…。

「カイくーん!乗り場この上。建物の中のエスカレーターで行けるんだって!」

「…あ、うん」

 係員の傍で無邪気に手を振る美代子に、乗りたくないとは言えなかった。
 1Fから3Fまで、びっしりとアミューズメントマシンが並んでいる。はしゃいで走り回る子供たちと何回かすれ違った。美代子と同じ愉しそうな表情(かお)をして。

「あ、ここ、ここから外に出るの」

「…え、もう?」

 一段前の背中が、弾んだ声で振り返る。悪魔の微笑(ほほえ)みに見えて、ほんの少し後悔したがしょうがない。甲斐はこっそり溜息をついた。
 3Fの扉から外へ出ると少しだけ列が出来ている。長く待たなくても簡単に乗れた。

「えーと、日本で三番目に高い観覧車なんだって。あれ?二番目だったっけ?兎に角、一番じゃないのは確かよ」

「何、その曖昧な知識」

 余裕があるのは、果たして何処までだろう。ゆっくり時間をかけて、ゴンドラがあがる。少しずつ、世界が上昇して行く――。
 出入り口の扉の真ん中を繰り抜いたようにガラスがはめ込まれ外が見えるようになっていた。勿論ゴンドラも上半分がガラス張りで広い世界が見渡せる。

「うわぁっ…凄ぉい!凄くいい眺めだねぇ!あ、あそこのビル、最上階が足湯になってるんだ〜へぇ?知らなかったなぁ」

「…う、うん、凄い…眺めだよね」

「海も随分遠くまで見えるねぇ、こんなにおっきいんじゃ普通見えるか。あ、赤レンガ倉庫ってアレかな。ねぇねぇカイくん、降りたらあそこに行ってカナにお土産を…って、あれ?ちょっとカイくん?」

「な、なに?美代子さん」

 心なしか、というか完全に、身体が固まっている。声まで硬質化しているようだ。見るのと乗るのでは大違いで、今更ながら後悔している感じ。そんな甲斐の様子をみて美代子が恐る恐る聞いてみると、案の定。

「…何で言わないのっ!」

「わぁっ!動かないでっ!揺れるっ!」

 あと少しで頂上。
 かなり、高い。軽度の高所恐怖症とはいえ、これは相当怖いに違いない。
 見る見るうちに、美代子の表情が曇る。

「…あたしがはしゃぐから言い出せなかったんだね」

「あ、いや、その、…え」

 視界から風景が消えて、甲斐の目に映るのは、美代子の顔だった。
 足の間にしゃがみこんで冷えた両手に、それを重ねる。人の悪い笑みを頬に貼り付けて。

「み、美代子さ」

「大丈夫、怖くないわ」

 そう言って、そっと顔を寄せ、軽く触れる唇は柔らかくて暖かい。繰り返されるキス。甲斐の薄い上唇を啄ばんで、下唇を甘噛みして、少し開いた処へ舌を入れて、歯列を舐める。情熱的なキス――。

「う…ん、ぅ」

「優しいコね、きみは」

 重ねたまま囁く声はとても甘く耳に響くんだと、甲斐は知った。
 更に深くなるキス。今度は甲斐の方から舌を絡ませる。あんなに強張っていた身体から力が抜けて、何時の間にか、重なっていた手を握り合って…。
 ふいに美代子が身体を離した。つられて目を開けるとそこは、もうすぐ終点。


「あ…あれ?」

「おつかれさまでした、もう怖くないでしょ?」

 美代子が悪戯っぽく言って、笑ってみせた。
 ふら付きながらゴンドラから降りると、腕に美代子の手が絡みついてくる。

「ね、行きたい処があるんだ。付き合ってくれる?」

 見上げてくる瞳が何かを企んでいても、かまわないと甲斐は思った。
 無言で、ふたりは歩く。主導権は美代子にあって、一体これから何処に向かうのか甲斐には分からなかったが、かすかに予感がある。
 駅前を通り過ぎて、小さな路地に入って、人がまばらになって、そのさきにあるのは――。

「…どの、部屋にしようか?」

「え…俺に聞くか」

「初めて?」

 隣でくすくす笑いながら見上げてくる美代子が可愛いかった。

「…当たり前でしょ」

 養護教諭とはもっぱら保健室が密会の場所だったから、こうやってラブホテルに入るのは初めてだった。
 全てが機械仕掛けで、誰にも会うことなく入室できる。なんて不思議な空間なんだろう。
 綺麗な廊下、小さく音楽が流れていて窓がひとつもない。甲斐は物珍しそうに辺りを見回している。
 その姿を愉しそうに見つめる美代子の視線など気付かずに。

「じゃあ、ここ。いい?」

 適当に部屋を決めて、甲斐の手を引いた。
 美代子の手が、じんわりと汗をかいている。
 多分、緊張しているんだろう、観覧車に乗ったときの甲斐のように。
 分厚いドアを開けると、さっき見た表示写真より少し狭く感じる空間がある。
 さきに美代子が入って、そのあとに甲斐が続いた。
 ドアを閉めた途端、かちりと鍵がかかる音がした。
 思わず振り返る。自動的に施錠される仕組らしい。

「…清算するまで出れないわよ?」

 そう言って美代子が艶っぽく笑った。人好きのするあの笑顔でなく。
 何処かで見たことのある表情…。
 
 そうだ、センセイだ…

 ――欲情した女のそれ。

 ドアの前で突っ立ったままの甲斐に、美代子が近づいて行く。

「カイくん…」

 耳に心地いい声が、名を呼んだ。
 この声が凄く好きだと、思った。
 引き寄せられるように、その身体を抱きしめる。

「…美代子さん、俺は、アナタが好きです」

「……」

 美代子は無言で、甲斐にキスをした。嬉しそうに、照れくさそうに、笑って。
 そして――。
 ただ本能の赴くままに。
 互いに服を脱がしあってもつれる様にダブルベッドに転がって、夢中で身体を貪った。
 美代子の豊満な胸、細い腰、足、思う存分舌を這わせる。肌理(きめ)の細かい肌が、気持ち良い。
 そして、一番触れたかった場所に指を這わす。
 そこは既に濡れていた。薄く開いた秘肉は、やすやすと指を飲み込んで行く。

「あ…ん、カイ、く、ん」

 白い喉を仰け反らせた。気持ち良さそうに息を吐いている。

「…美代子さん、みて?」

 指に絡めた蜜を、かざして見せた。途端に、さっと頬に朱が散る。

「凄く、濡れてるよ…そんなに舐められるの好き?」

「…あ」

 潤んだ瞳が、強請(ねだ)るように甲斐をみつめる。それだけで、下肢が熱くなった。

「ねぇ、挿入(いれ)ても、いい?」

 返事の変わりに、力を込めて甲斐の身体にしがみ付いてくる。
 甲斐はゆっくりと、美代子の膣内(なか)に身を沈めた。





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2008年06月11日

群青のアオ 5(全7話)

群青のアオ /辺未明
5:妄想


 この扉の向こうで一体何が起きているのか…。
 平賀甲斐(ヒラガ カイ)はただ呆然と突っ立っていることしか出来ずに居た。
 心臓の音がウルサイくらいに響いている。
 なのに、手足からどんどん冷えていくのも確か。
 ドアノブにかけた手をそのままに会話を立ち聞きするハメになっていた。

「…足の間から黒いのが見えてるよ?色っぽいねぇ」

 チラリズムは大好きよ。
 喉で笑いながら、かなが言った。かすかに衣擦れの音がする。

「…もぉあんまりそういうこと言わないで」

「恥らってる姿、いいね」

「だから言うなって言って…キャッ!」

 ギシッと、何かか軋んだ音がした。

「柔らかいね〜!フニフニするよぅ。あたしね、いっぺんミヨちゃんの触ってみたかったんだぁ。ふぅん、こんな感じなんだねぇ」

 …胸、触ってるのか!

 頬が紅潮する。
 ごくんと、無意識に唾を飲み込んだ。
 甲斐の脳裏に浮かんでいるのは、あられもない姿の美代子とかな。折り重なって、戯れるふたり――。
 恐らく美代子は半裸なのだろう。
 かなの裸はともかく、美代子のは一度見たことがあるので、よりリアルに想像できた。一方的に悪戯されているのは彼女の方で、そしてそれを受け入れているのだ。
 親友にのる姉。
 なんて、倒錯的な情景なんだろう。
 かなに、そんな性癖があったなんて知らなかった。
 ということは、もしかして、甲斐の居ない時間にこうやって…。
 ふいに甲斐の中に生まれている感情。
 イライラとしたよく分からないものの正体。
 これは多分、嫉妬。
 知らず、鞄の取っ手を強く握った。

「こらっ、くすぐったいってば」

「うん、思ったとおりだ。ミヨちゃんで良かった」

 嬉しそうにかなが言う。

「感心してないで。するの?しないの?」

 くすくす笑いながら美代子が言った。まるで誘惑しているような響きで…。
 ズキンと、甲斐の胸が痛んだ。美代子は、かなが好きなのだ――と。

「しますします!折角オカネ払うんだから、元は取らないと!」

 ざっと音をたてて、血液が頭の天辺から背筋を一気に降りた感じがした。

 …カネって、金か!
 姉ちゃんは…美代子さんに何をしてんだ!!

「よし、さっさとしちゃおうか!」

「だから早くって言ってるのに…」

 恥ずかしいと小さな声で美代子が言った。

「そんなに恥ずかしいなら目隠ししようか?」

 愉しそうに、続く戯れ。
 甲斐は、どうしていいのか、分からなかった。
 かなと美代子の関係。
 友達と、二人は言った。
 なのに、カネを支払ってかなは美代子に――。
 美代子もソレを承諾しているということは…。
 嫌な方へと落ちていく思考を止められない。

「ミヨちゃんてば、足閉じてる。もう少し開けないかなこんな感じに」

「ち、ちょっとっかなっ」

 理性が働いていたのはここまで。
 瞬間、派手な音をたててドアを開いていた。

「お前ら、何してんの!」

「!!」

 弾かれたように、かなが振り向いた。

 ――が。
 甲斐の目に飛び込んできたのは、脳裏に描いていた二人の痴態ではなく。
 フローリングの床に膝立ちのままで闖入者を振り向いたかなの顔は驚愕そのものだった。

「び、ビックリした〜…」

 右手で胸元を押さえて、大きく溜息をついて。左手には、デジタルカメラを握っていた。

「…あ、あれ?」

 一体、何がどうしたんだ?さっきまでのアレはどういうことなんだ?
 クエスチョンだけがグルグルと甲斐の思考を支配していた。

「もぉカイってば、チャイムくらい鳴らしてよぉ!イキナリ入ってきたら何事かと思うじゃん!」

「お帰りなさいカイくん」

 その奥に。ソファーにもたれた美代子の姿――。
 赤く頬を染めて、引きつった笑顔を張り付けて。
 薄い白のブラウスの前を大きく開け、黒いレースの下着だけ身につけている。
 1サイズ小さいのか、窮屈ように収まっているように見える。甲斐の視線にようやく気が付いて、ブラウスの前を掻き抱いても遅いのだが。

「…あ、ただいま」

 唖然としながら生返事を返している。

「んじゃ、まぁ気を取り直して、やりますか。ミヨちゃん、いくよー」

「はぁい」

 再びソファーに向き直ると、デジカメを構えたかながシャッターを押した。
 撮影者の指示通り、美代子がポーズをとる。
 胸を強調させたり、尻を突き出したり、足を大胆に開いてみせたり、見ているこっちが赤面してくるくらい色っぽかった。
 想定外のギャラリーが居た所為か、最初こそ恥ずかしそうな表情(かお)をしていた美代子だったが、最後の方は躊躇(ためら)いなど見せず、次々とこなしていった。
 艶やかな姿を映像として保存していく。
 その様子を、甲斐は見ていた。

「…かな、コレ何」

 シャッターを押す姉に弟は力なく問いかけ、姉はそんな弟の顔すら見ないで撮影をしている。

「んー?撮影、資料用の。ほら、ウチのアシちゃんたちって微乳ばっかりだから丁度いいかと思ってさ。折角ミヨちゃんにメシスタントで働いてもらってたし、写真のモデル料も加算するからって、口説いたの」

 写真のデータをいちいち確認しながら説明をした。

「メシ…何?」

「食事の面倒をみてくれる役割のヒトのこと」

 満足のいくデータだったのだろう、デジカメの画面から顔を上げて言った。

「次の作品が、巨乳のコをヒロインにして進める話でね。傍に丁度良い被写体がいるでしょ?んでお願 いしたってワケよ。いやー、助かっちゃった!ありがとねミヨちゃん」

「どういたしまして。これからすぐ仕事場に戻るの?ごはんは?」

「あー…戻ってから食べるよ。プロットを先に作っちゃいたいから。多分あんまり遅くなんないと思う」

 平賀かな、職業は漫画家で現在某青年誌に連載中。性別は非公開。作品の内容が成年指定で、弟と親しい友人以外には秘密にしていた。編集者とアシスタントの出入りが多いため、自宅と別に仕事場を借り行き来している状態だった。
 ――ということを、今更ながら思い出して。
 甲斐は全身の力が抜けるような気がした。

「うん、分かった」

 じゃあねと言い、大事そうにデジカメを片手に、かなが出掛けて行った。
 取り残されたのはやたら色っぽい格好をしたままの美代子と、言葉がみつからない甲斐だけ。

「〜〜〜…ッ」

 その場にへたり込むと、真っ赤になったままの顔を片手で覆って俯(うつむ)いて、深い溜息をついた。あんまりな邪推に眩暈までしてくる。
 恥ずかしいのは、こっちの方だと思った。

「どうしたの?カイくん」

 いつの間にか、隣に美代子が座り込んでいる。

「…なんか、誤解した?」

 しゃがんだ足の間に見えるのは黒い下着ごしの恥丘だった。甲斐はギュッと目を閉じた。

「てっきり、かなと美代子さんが…その、シてるのかと思って――で、カネとか言い出すから……」

「止めようとしたの?」

「……う」

 くすくす笑う声がした。顔を上げると、唇に暖かいものが押し付けられる。
 最大至近距離でみる、美代子の顔。見開いた目をゆるゆると閉じて、甲斐は美代子の唇の感触を追った。
 長いような、短いような時間。鼻腔をくすぐる甘い香りに酔う。
 ゆっくり甲斐から身体を離すと、美代子は小さく笑って、

「カイくんて、良い匂いがするんだね…」
 そう言った。
 
 ソレハ、貴女ノ方ダ

 アトマイザーの中身がなんなんのか、明日ナギサに聞きにいこう。そんな風に甲斐は思っていた。
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2008年06月04日

群青のアオ 4

群青のアオ /辺未明
4:接近



 外は雨が降っている。

 保健室内に響いていた、ベッドが軋む音も覆い隠してしまう程の、激しい雨音だった。

「裸に白衣も色っぽいけど裸エプロンもかなり良いと思うんだけど、センセはやったことある?」

 パイプベッドの上で腹這に転がったまま、平賀甲斐(ヒラガ カイ)は何気なく言った。

「…裸エプロンねぇ?男っていっぺんヤりたがるわよね、そういうの」

 にたにたと笑いながら、養護教諭の鹿島麗子(カシマレイコ)が言う。

「君もそうなんだ?」

「…うっ、まぁネタだからなぁ。否定はしません」

 やったんだけど言う必要はないよな、と内心甲斐は思った。鹿島はまだ笑っている。

 カーテンを閉め切った窓に寄りかかり、ベッドに寝転んでいる男子生徒の言葉に耳を傾けている養護教諭は、白衣を素肌に羽織っただけ。首筋を流れる長い巻き毛は湿っていて首筋にべったりと張り付いていた。

「ねぇ…?そんなことより…もう一回しようか」

 肩から白衣が滑り落ちて豊満な肉体が惜しげもなく晒される。
 しっとりと弾力のある白い肌、豊満な胸、括れたウエスト、むっちりとした太腿。同学年の女生徒にはない色気が性欲を刺激する。

「……ッ」

 こくんと、甲斐の喉が鳴る。シたばかりだというのに下肢に溜まりつつある熱はまだ青さの残る若造そのもの。

「…はい、センセイ」

 そう言うと甲斐はベッドからのろのろと起き上がりぺたんと座り込んだ。

「うふふ…いい子ね」

 口紅が取れてしまってもなお、紅い唇が綺麗な半月を作る。
 その顔を見ながらとても綺麗だと、甲斐は思った。
 鹿島がゆっくりとベッドに近づいてくる。その姿から目を放すことが出来ないでいた。
 甲斐が転がっていたベッドに乗り上げて、枕をパイプにあてて、背中を預けた鹿島は、ゆるゆると足を開いた。
 まだ濡れそぼったままの陰毛を長く細い指がかき分けていく。
 其処は。
 ついさっきまで甲斐が挿入(はい)っていた場所だった。興奮して勃起している肉芽と、うっすらと紅い肉が覗く。

「さぁ…舐めて、私を気持ち良くしてね」

 興奮したような、声。
 唇を這う、赤い舌。
 引き寄せられるように甲斐は女の下肢に顔を埋めていく。つんと、チーズのような匂いがした。これが女の…いや牝の匂いなんだと判った。
 裂け目に沿って、舌を這わせてみる。

「…ん」

 ぶるりと鹿島が身震いをした。途端にとろりとしたモノが溢れてくる。

 感じて、くれている。

 夢中で、舐めた。
 硬くしこった芽を舌先で転がすと、気持ち良さそうに啼く。強めに吸われるもの好きらしい。

「あ…ああ、そう…悦(い)いわ…」

 仔猫がミルクを飲むように、音をさせて愛液を舐めとっていく。
 多少乱暴でもそれは快楽に直結してしまうくらいに――悦かった。

「ん、あッ…」

 経験値の低い甲斐のセックスで、イくことが出来ない鹿島の身体には、中途半端な熱が燻(くす)ぶっていた。

「もっと、もっとよ…」

 押し付けるように伸ばされた鹿島の手はしっとりと汗ばんだ甲斐の髪の毛を掴んだまま、離さなかった。

 すっかり雨は上がっていた。ひんやりとした空気が火照った身体と心を冷やしていく。

「うあ〜…何か、疲れた…すっごく、疲れた」

 甲斐は、誰もいない昇降口で呟いた。
 イくまで舐めさせられた。お蔭で舌の付け根が痛いし、口がだるい。
 その後しっかり挿入(い)れてゴム越しに射精したからすっきりしたといえばそうなのだが。

「よぉ、何疲れた顔してんの――えっと、平賀?」

 低い声が甲斐の名前を呼んだ。弾かれたように振り返ると、

「もう帰り?」

 着崩したブレザー姿のでっかいスポーツバッグを担いだやたらと背の高い男子生徒、渚真理(ナギサ マリ)が立っていた。

「渚…も、今帰り?」

 知らず、声が掠れた。多分、顔も引きつっているかもしれない。
 男子バスケット部所属のこの美形は、人懐っこい笑顔で頷いた。
 正直に言ってしまえば何となくバツが悪いというか、会いたくないというのが本音だったが、無下にも出来なかった。
 ついと近づいてくる渚をただ突っ立ったまま見ていた。傍まで来ると、前に屈んで鼻先を甲斐の首辺りに寄せる。

「なっなんだよ…」

 慌てて身を引くと、やたらと嬉しそうな視線とぶつかった。

「俺らってさ、兄弟なんだって?」

「ンなっ!!」

 かあっと、頬が紅潮するのが分かった。
 ちゃっかり聞いていたのだ、真実は。

「香水の匂い、移ってる」

 次は、ざっと血の気が引くような感覚がした。
 そんな甲斐の顔色を見てますます渚が笑った、声を上げて。

「赤くなったり青くなったり忙しいな、お前」

「だっ…誰の所為だと思ってんだ」

「安心していいよ、兄弟は俺らだけだから。センセイ関係は知らんけど」

 渚は担いでいたバッグから小さなアトマイザーを取り出すと、甲斐に向けて一吹きして、

「…女ってさぁ、歳取っててもそうじゃなくても匂いに敏感なんだわ。こーゆーのを用意しておいた方が良いぞ」

 言いながら、ニヤリと笑った。そして、

「なぁ、仲良くしようぜ?お前とは気が合うと思うんだけど」

 甲斐は思いっきり顔をしかめて言い放つ。

「絶対にイヤだ」

 ヘロヘロになりながら、自宅へ辿り着いた。何だか本当に疲れている、主に精神的にだが。帰りがけ渚にばったり出くわしたのが効いた。
 ハラが減った。
 メシ食ってさっさと寝てやる。甲斐は小さく溜息をついた。
 チャイムを押すのも面倒だった。鍵を差し込んでドアを開けると室内は、しんと静まり返っている。
 どうやら、留守らしい。
 まぁこんな日もあるだろう。彼女は居候ではあるがけしてお手伝いさんではないのだから。

「……」

 美代子の出迎えがないということが、寂しさに拍車をかけた。
 
(最近こういうのなかったからなぁ)

 そう思ったとき、リビングから声がする。
 ぴったりと閉じたドアから漏れる会話。
 かなと、美代子の声。

 (なんだ)
 (居たんじゃないか…)

 伸ばした指先がノブに触れる瞬間、甲斐はその身を強張らせた。

「…ほら、早くボタン外しなよ」

 愉しそうな、かなの声。
 かすかに、衣擦れの音がする。

「…ホントにするの?」
「わぁ…凄く綺麗…やっぱでっかいおっぱいって、迫力あるなぁ」

 感嘆しながら、かなが言った。いいなぁ、あたし微乳だからなぁと呟く。
 そんな姉に美代子は小さく笑いながら言った。

「…莫迦。あんまりみないでよ」

「バッカ、見なきゃ意味ないでしょうが。次は足ね、はい、ゆっくりでいいから…開いてごらんよ、ね?」

「…ん、もぉ」

 甘く美代子の吐息がもれた。その声色は嫌悪ではなく、寧ろ――。

 コレハ、ナンナンダ?

 手の指先、足の指からどんどん冷えていく――。
 心臓の音がやけに大きく聞える――。

 呆然と、甲斐は立ちすくんでいた。





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2008年05月28日

群青のアオ 3 (全7話)

群青のアオ /辺未明
3:距離


「え?!」

 ドアが開いて、思わず美代子が振り返った。

「――あ」

 我ながら、間の抜けた声だと甲斐は思った。

 雫が美代子の身体を伝っている。
 下着以外のもの全てを脱いでいた。

 ――無言で、ふたりは、
立ち竦んでいる。

 頭が真っ白で、どうしたらいいのか分からない。
 ぶるっと美代子が身震いをして、小さなクシャミをした。
 途端、甲斐が我に返る。

「ち、ちょっと待ってて!」

 玄関先へ鞄を放り出して、濡れた靴下のまま風呂場へ行く。チェストからバスタオルを掴んで玄関まで戻り、手早く広げて美代子の身体を包んだ。
 美代子は、呆然と甲斐をみつめていた。まるで言葉を忘れたように、ただ見上げてた。
 濡れて、顔に、首に、長い髪が張り付いている。つい、視線が胸に集中してしまう。濡れた鎖骨が、かなり色っぽい…。
 そんな場合ではなく、何度か、頭を打ち振って、

「早く、シャワー浴びて暖まってきなよ。身体、冷えてるでしょ」

「…あの」

「何?」

「カイくんは?」

「俺はいいの、伊達に走ってないから。ホラ、早く行って」

 美代子を風呂場に押し込んで、甲斐は水を吸った制服のまま、自室へと戻った。
 甲斐の身体も正直冷え切ってはいたが、流石に自分まで脱いでしまったら色んな意味でヤバイと思う。濡れた場所なら拭けばいいのだ。だからかまわず、ずぶ濡れのまま家の中を歩き回って。
 そして、何故美代子があんな場所で服を脱いだのか分かった。

 美代子も、濡れていたからだ。
 
 居候の身だから、出来るだけ汚さないようにしよう――。

 多分、そう考えて。

「…馬鹿だなぁ、そんなの気にしてたんだ」

 顔を片手で覆って、小さく笑った。すごく可愛いと思った途端、さっきの姿を思い出して、赤面してしまった。
 思っていた以上に、大きかった胸と、結構ふくよかな腰まわりだった気がする。

 …裸エプロンとか、似合いそうかも。

「〜〜〜ッ」

 とん、とドアにもたれ、そのままズルズルと背中を滑らせて、絨毯敷きの床へ座り込んだ。
 ちょっとした妄想なのに、勃起している。
 冗談じゃなく、ヤバイと思った。
 そろそろと、凍えた手を下肢に伸ばした。ズボンの上からでもはっきりと形が変わっているのがわかる。

 まさか、こんな風にヌくことになるとは思わなかったな…。よりによって、美代子さんで。

 軽い自己嫌悪にさいなまれたが、この状況のままでも困る。

「…っくそッ!」

 ジッパーを下ろす音がやけに大きく響くような気がした。

 脳裏に浮かんだのは、鹿島の顔だった。
 積極的で大胆な、養護教諭の鹿島麗子(カシマレイコ)。大人しくマグロになっていろと、組み敷かれてしまったのは、昨日のことだ。

 厚めの唇が、萎えた汗臭いペニスを咥える。舌で嘗め回して、粘膜全体で強く吸い上げながら扱く。直接的な刺激に、簡単に固くなったソレの鈴口から滲み出た透明な液体を、わざと音を立てて啜られる。
 睾丸をかわるがわる転がされて、快感が背筋を走った。

(ふふ…、気持ちいいでしょう?)

(あたしが、全部搾り出してあげるから)

 別のイキモノのように、赤い舌が根元から先端へと這う。見せつけられる口淫から視線を反らすことが出来ないでいる。
 しなやかな手が、吐き出され唾液にまみれたペニスを擦った。
 よく磨かれた指の爪が綺麗だと、全然関係ない
ことで興奮する。

 視覚と聴覚の刺激。

 決定的な刺激を与えられず、限界まで我慢させられて、ようやく待ちわびた感覚が与えられる。
 鹿島が自ら広げた入り口はとても紅くて、それだけでイきそうなにった。
 ぬるりと湿った膣。
 敏感な先端をゆっくりと、飲み込んでいく。意地が悪いくらいにジリジリと時間をかけて。
 根元まで収めて、うっとりと呟いた。

(…あぁ、ん、硬、い)

 そして、ゆるゆると動きだす。少し腰を浮かせては、落す。
 その繰り返し。内壁全てが蠢いて、眩暈がした。
 愉しそうに、腹の上で腰をふる鹿島の求めるがまま、繰り返されるストローク。

「ん…ふッ、は…っん…んんッ」

 声を殺しながら。
 荒くなる息。
 もう少し、
 もう少しでイける。

 そして――。

 いつの間にか、
 鹿島ではなく――。

 鹿島の姿が、美代子に変わっていた。

「ふ…うッうッ、!!」

 どろりとした精液が手から溢れ、床をも汚した。
 繰り返す荒く浅い呼吸。
 重く、罪悪感が圧し掛かった。

 長袖のTシャツとジーンズに着替え、濡れた衣類を片手に自室から出ると、着替えを済ませた美代子が廊下に這いつくばっていた。
 二人分の足跡を雑巾で拭いている。

「あ、カイくん、お風呂入らなくても大丈夫?寒くない?」

 四つん這いのまま、見上げてくる。
 広めの襟元から、垣間見える胸。下肢にぴったりとフィットしたパンツ。
 さっきまで妄想していた映像がフラッシュバックする。

 ――やばッ!

「…ッ!お、俺がやるから!美代子さんはメシ作ってよ、なんか、腹減っちゃって」

 慌てて跪いて雑巾をひったくってそう言うと。

「ありがと、じゃ、お言葉に甘えるね」

 満面の笑みで答えて、立ち上がり際に甲斐の湿った髪を撫でていった。
 手の温もりが触れた場所に残る。

「……」

 台所へと向かう後ろ姿をぼんやりと見送って。

 もしかして、あのひとワザとやってんのか?

 手玉に取られる感覚は嫌いじゃない。ふと、そう思った。





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2008年05月21日

群青のアオ 2 (全7話)

群青のアオ /辺未明
2:美代子


 時刻は朝、7時35分。
 電子音が鳴る前に、平賀甲斐(ヒラガカイ)は目を覚ます。
 四畳半の自室で布団に寝転んだまま、天井をみつめてぼんやとしている。トントンと、包丁の音がして、ようやく意識がはっきりとした。

(…いい、匂い)

 漂う味噌汁の匂い。
 多分この所為で起きたのだろう。

 朝食を摂るより睡眠。

 ずっとそう思っていたのにどうだ、腹の虫が鳴いている。
 姉の友達が、この匂いの元を発生させているという事実。何だかそれが妙に嬉しかった。

「オハヨウゴザイマス、美代子さん」

 身支度を済ませて、忙しく動く美代子に声をかけた。姉の姿はない。
 多分まだ、寝ているのだろう。

「おはよう、カイくん」

 美代子が笑顔で言った。
 姉弟二人が住むにはいささか広い部屋に、朝香美代子(アサカミヨコ)が転がり込んできたのは、昨夜のことだった。

「朝ごはん食べれる?カナには要らないって言われてたんだけど、あたし、食べないと駄目なのよ」

 食卓に並ぶ、主食と副菜。炊きたての白米、豆腐とワカメの味噌汁と焼鮭の切り身、出し巻き卵と小松菜のおひたしに、根菜の煮付けと沢庵まである。

「…凄いね、全部美代子さんが用意したの?」

 突っ立ったまま、甲斐が感嘆して呟くと、

「好き嫌いがないって聞いたから栄養ありそうなの並べてみたんだけど」

(…うっ!)

 心配そうに首を傾げる仕草が可愛くて、心拍数が跳ねあがる。

「や、全然、大丈夫!いただきます!」

 すとんと椅子に座って、慌ただしく食事を始める。

「はい、召し上がれ」

 美代子もゆっくりと箸をとった。
 味噌汁をすすりながら、ちらりと横目で彼女の顔を見る。

 年上の。
 しかも姉の友達に。

 甲斐はひとめぼれをしてしまっていたのだ。

 あの夜――
 自宅のドアが開いて、

「お帰りなさい」

 甲斐より頭一つ分低くて、見たこともない女が、を出迎えた。
 無造作に結わえた長い黒髪、緑色のカットソーを肘までまくって、黒いエプロンを身に着け、薄く化粧をしているだけでに装飾品が何もない。人懐っこい笑顔がとても印象的だった。

「遅かったね、部活?」

 困惑したまま、コクコクと頷いた。

「え…えっと、まぁ、そうなんだけど…あの?」

 へどもどしながら、混乱しつつも言葉にする。

「そっかァ、お疲れ様。オナカすいたでしょう?もうすぐ出来るから待っててね」

 落ち着いた声も、耳に心地よかった。
 ――ではなくて、何故見知らぬ女がさも当然のように居るのか、姉はどうしたのか。
 甲斐に背を向けて、台所へ行こうとする女を呼び止める。玄関先で突っ立ったまま。

「あ、あの!」

 振り返る女をみつめながら、

「あの、貴女、誰」

 一瞬驚いたように目を見開いて、そうして。
 更に深くなる微笑。
 甲斐の心臓が、ドキンと音をたてた。

「ああ、ごめん、話聞いてないんだね。そりゃあ驚くわよねぇ」

 くるりと、再び甲斐へ向き直って、女が言った。

「君のお姉さんの友達で、朝香美代子と言います。しばらくの間厄介になるけど、仲良くしてね」

「はい?!」

 いつの間にそんな話が持ち上がっていたのか、全く知らされていないお蔭で、マヌケな声しか出なかった。
 タイミング良くガラリと風呂場の引き戸が開き、部屋着がわりのTシャツ一枚で濡れた短い髪をタオルで拭きながら、かなが現われた。そして弟の姿を見つけると、

「おかえり〜、遅かったじゃないのぉ。アンタね、メールしたんだから返事くらい寄越しなさいよ。大事な話だったのに〜」
 六つ歳上の姉は、細い頬をぷっと膨らませて言った。美代子と比べるとスレンダーな体躯の所為か随分と幼く見える。

「…は?メール?」

 制服の尻ポケットを探る。ふいに電源を切っていたのを思い出した。
 甦る記憶。
 養護教諭との淫らな行為を、誰にも知られたくなかったから。
 機動させると未読メールが三件。うち二件がかなだった。

「――え?」

『話アリ。電話よこせ』
『夜から友達が同居』

 簡単な内容の文章。
 小さな液晶とかなの顔を何度も見る。

「まぁずっとっていうワケじゃないからさ」

 姉は楽しそうに言い、
 弟は、決定に従った。


 朝食を摂ると脳味噌に栄養が回って、勉強の効率がいいというのは本当かもしれないと、甲斐は思う。オマケに弁当まで持たせられた。
 両親が軽井沢に住み移って以来姉弟二人きりの生活で、気まぐれにしかしない自炊だったから、正直嬉しかった。

「あれ、平賀くんがお弁当だ。お姉さんが作ったの?違うの?ふぅん」

 昼休みに入って直ぐ、クラスメイトの渚真実(ナギサマミ)が目ざとく言ってきた。
 養護教諭の相手、渚真理の片割れだった。

「昼飯まだ?」

「うん、友達が作ってきてくれるから、これからなんだ」

「友達?」

「そう。あ、そうか、平賀くんてずっと食堂組だから知らないのよねぇ。あのね――」

 何年か前に母親が亡くなって以来、親友が毎日弁当を持参してくるようになったのだという。
 最近新しい母親が出来てもそれは変わらないのだと。そう言って、真実は笑った。

 ふわりとした長い色素の薄い髪を左肩口で束ねたこの美形は、さっぱりとした性格で女子に人気が高かった。二卵性でも、何処となく雰囲気は似ているようだ。

「…ま、ある意味兄弟みたいなもんだもんなぁ、俺ら」

「ん?何?」

 適当に言葉を濁した。

 ふと過(よ)ぎる、昨日の醜態。
 鮮明に甦るそれ。

 メシを食いながら思い出すことじゃないよなぁと自分に突っ込む。
 そして、ふと思った。

 渚真実は真理の…
 片割れの所業を知っているのだろうか――と。

 雨が、降っている。
 濡れるのもかまわず、駅から自宅まで走った。ずぶ濡れのまま、ドアに鍵を差し込む。と、開いていることに気がついた。
 そのまま、ドアを引き開ける――。

「え?!」

「――あ」

 …そこに、下着姿の美代子が立っていた。





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2008年05月15日

群青のアオ 1(全7話)

群青のアオ /辺未明
1:甲斐(カイ)


――喧騒が聞こえる。
 部活中の生徒の声、走る足音、全ての音が凄く遠かった。

 何故こんなことになったのだろう。
 部室に常備してある湿布薬の在庫が切れていて、その補充に立ち寄っただけじゃなかったか?

 在りえない現実。

 センセイが、裸で、教え子の腹に乗っている、という現実――。

「んッ…っううっ」

 女の中に埋め込んだ欲望をギユッと締めつけられて、男子生徒が呻く。

「まだ、よ。我慢我慢…早いのって、はぁ…ウブっぽくて…んん、いいんだけど、もう少し私を、愉しませて…ね?」

 吐息混じりで快楽を貪るように、女が言う。小麦色に焼けた裸体を見下ろしながら、嬉しそうに目を細めた。

 生徒はただ、乱れた呼吸のまま見上げている。
 何も考えられない。
 されるがまま、人形のように。

 密室の中で響く水音、肉がぶつかり合う音と嬌声。荒い息が淫靡な雰囲気に拍車をかける。
 自ら腰を振る女の身体をぼんやりとみつめ、自分が犯されているようだと、思った。
 まるで他人事のように、非日常的な出来事に身を委ねていること自体、夢を見ているようだとも。
 豊満な胸が、揺れる。
 栗色の長い巻き毛が汗で白い首筋に張り付いている。しっとりとした肌と、肉付きの良い肢体――。
 同年の少女には無い牝の匂いと色に、生徒は完全に酔っていた。

「は、…ふふ…まだよ、もう少し頑張って?」

 ささやくように言うと女はゆっくり屈みこみ、汗で湿った短めの髪を撫で、それから顔を両手で包んで、喘ぐ口元を息ごと塞いだ。

 舌を絡ませて強く吸い弱く噛む。
 その度に、ビクビクと生徒の身体が撥(は)ねた。濃厚な手管にされるがままの姿を、女は薄く目を開けたまま愉しんでいるようだった。
 そんな行為を繰り返す女の口紅がすっかり取れてしまっても、その艶やかな唇はどこまでも紅く艶(なま)めかしい。
 たまらなくなって、生徒は女の身体にしがみついて――イった。
 青年と呼べるほど大人ではなく少年というほどの幼さも無い。中途半端な存在の男子生徒のかさついた唇を存分に味わって、さも楽しそうに腹の上で女が微笑(わら)った。

「…うふふ、お楽しみはこれからよ?」

 その顔があまりにも妖艶で、イったばかりの下肢にまた熱が溜まるような気がした。
 今、平賀甲斐(ヒラガ カイ)の傍に在るのは、熱っぽい空気――そして、湿った音…。
 ギシギシと、保健室のベッドが派手に軋む。廊下にはまだ生徒が屯(たむろ)しているというのに、養護教諭の鹿島麗子(カシマレイコ)と淫らな行為にのめり込んでいる。壁一枚隔てた空間でこっそりと行われる性交…その事実が益々二人を興奮させていく。

「せ、せん、せ…俺、もぉ駄目ッ…あっあっ、で、でるッ…!」

「ッ、凄いッ…すっごくカチカチになってるの、分かるわよ…ッ」

 煽るように、ますます強く上下に腰を振った。ぬめぬめと熟れた秘肉がむき出しの神経を締め上げながら擦る。膣ギリギリまで陰茎を抜いて、再び奥まで突き入れ、またギリギリまで抜く。その繰り返す行為に、全て持っていかれるような感覚がして、ギュッとシーツを掴んだ。

「ああッ!先生ッそ、そんなに強く、したら、も、もたないって、ばっ!」

「…んぅッ、もう少し、我慢しなさい…、そしたらもっと良くなるんだから…あん、いい、ッ」

 強く目蓋(まぶた)を閉じて、快楽を追いながら鹿島は自分の紅いふっくらした唇をペロリと舐めた。

「……ッ!」

 あの唇で、キスをしたのか。あの舌が、全部舐めたのか――。

 その仕草をまともにみてしまったら、経験の浅い甲斐にはとても太刀打ち出来ない。

「だ、め、も、もたない、てば、ぅわ、あ、あ、ああッ!」

「んんッ!」

 何度も腰を突き上げながら射精を終える。二度目の絶頂で、息も絶え絶えになっていた。
 鹿島はくすくすと笑いながら息の荒い生徒の鼻を摘んで、根性ナシとだけ言った。

「硬いし、長さもあるしあとは持久力?…まぁこんなもんよね、よく頑張った方よ」
 リノリウムの床に裸足で立ち、素肌に白衣を纏(まと)う。
 先程まで乱れていたようには見えない。
 甲斐はまだ、ぐったりとベッドへ突っ伏したままだった。

「…誰と比べてんですか、誰と」

「うふふ、ナイショ。というか、知ってるんでしょ?私とカレの噂」

 楽しそうな声を甲斐は複雑な気持ちで聞いていた。正直、良い噂ではなかった。

 養護教諭のお相手。
 同級生で、男女二卵性双生児の片割れだった。アイドル並の美形でスポーツ万能で成績も良い。
 ――確か、名前は。
 渚、真理と言った。

「ええまぁ、一応は。先生の方が誘惑したとか何とか…あいつ、女子に凄く人気があるから結構酷く言われてたけど」

 《ナギサ》という男子生徒の顔を思い出した。彼もこんな風に誘われたのだろうか…。
 事実、簡単に誘惑されてしまったのだ、甲斐は。

「あの時は失敗したなぁと思ってたのよね」

「なんで?」

 リネンから顔をあげると、視線がかち合う。伸びている姿を見ていたらしい。にんまりと笑み、ついと腕を伸ばして、無駄な脂肪のない裸の背中を指先でなぞった。

「ひゃっ!」

「ん〜良い反応。こういう子の方が好きなのよホントは。主導権握られちゃうのはちょっとね。最初は新鮮でいいんだけどそればっかりだとストレスが溜まるというか。どう?もう一回する?」

 イってないんだけど、と言い募る鹿島に、勘弁してくれと、甲斐は謝るしかなかった。

 結局部活をサボり帰路につく。
 所属は陸上部。
 長距離ではなく短距離ランナーである。持久力より瞬発力。それを活かす体力作りは日頃からしていたのに。まるで、精気を吸い取られてしまったように身体が重い。
 あんな長いセックスは不向きだと思った。

 何だか、疲れたなぁ

 軽く溜息をついた。
 駅から十五分、中古のマンションに姉と二人暮し。見上げると部屋に灯りがついている。
 チャイムを鳴らすと、ドアの向こうでバタバタ音がした。ドアノブが回って、

「お帰りなさい」

(え?)

 甲斐は目を見張った。
 確かに、自分の家だ。
 それは間違いない。
 では、この女は誰だ?

 何処までも、非現実的な状況は続いている。

 見たこともない女が笑っていた。




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posted by 美咲 at 16:04| 群青のアオ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月30日

あたし達の場合 2

あたし達の場合 /村上哉栄
2:元カレの場合


元カレは、平日の夜遅く。
ヤるためだけにあたしの部屋を訪れる。
別れた理由は彼の浮気。
それでも身体の相性はバツグンによかった。
今まで経験した中で、やり方もタイミングも、全てがあたし好み。
だから、今度はあたしが浮気相手。抱かれてやっているんだ。

「なあー、恵」

後ろから抱きついてくるのにクスクス笑いあう。
「くすぐったいよ」

笑いながら、欲望を満たし合うためだけに抱き合う。
なんて背徳的な行為だろう。
後ろから回ってきた手が胸をまさぐってきた。


「やっぱ恵の乳は、いーわ。ちょうどいい」

なにがちょうどいいんだか。
彼氏がいるのに元カレと関係を持つなんて、悪い女かな。
この元カレ、仁はあたしが今まで付き合った中で一番短かった男だ。

嘘つきで浮気症で、とにかく最悪の男。
だけど、身体の相性はバツグンだった。
だから今はセフレ。

お互い割り切った、ある意味大人な関係。

「よし、ヤるか」

ゲームでも始めるみたいに仁は言って服を脱ぎ始めた。
仕方なくあたしも自分の服に手を掛ける。

まずはキス。

ホントは一個だったものが半分に別れたのかと思うほど、しっくりくる唇。

「なあ…いつものやつ、やって」

おねだりしたって可愛くない。
けれど、あたしは仁が望むように行動する。
ようするに、フェラなんだけど。
仁は絶対この単語を口にしない。なにかポリシーでもあるのかと思うほど。

もう半分勃ちあがってるそれに、まずはキスをする。亀頭がスベスベしてて唇に当たるのが気持ちいい。
次に舌を出して下から嘗め上げてやる。
それだけで完全に勃つ仁に少し愛しさを覚えた。
舌でカリをくすぐりながら、手で優しく扱く。
鈴口に舌を差し込んで上目遣い、チロチロと嘗めて。
仁は硬さを増してあたしの唇を圧迫してくる。
今度は口を窄めて咥え込み、頭を上下させて追い詰めていく。
面白いくらいに仁は感じて、時々声を漏らす。
こういう素直なところが憎めない一端かもしれない。

「っ…恵、イッていい?」
「ダメだよ!あたしまだじゃん」

慌てて仁の根元を押さえる。

「じゃあ、上乗ってよ」
仁は甘えるように言った。
仕方なく騎乗位になるように仁の身体に跨がる。
あたしの身体は仁への愛撫だけで高ぶっていた。
「あ…入る…っ」

ゆっくりと身体を下ろしていくのと共に下からも突き上げられて、声が零れた。
「ぁんっ!ちょっ、早いよ」

仁が我慢出来ないとでもいうように、下から突き上げてくる。
声を堪えながらその律動に飲まれて。

「恵っ!もう限界!」

仁の言葉に慌てて身体を持ち上げる。ゴムつけてる間がなかったから、すごく慌てた。
イききれてない仁に手と口を添えて、終わらせてやる。白濁した液であたしは汚れた。

あたしは自ら汚れにいったんだ。

こんなに淫らなあたしをトモキが知ったらどうおもうだろうか。

リベンジとばかりにあたしの身体を弄りだした仁のせいで思考はそこで止まってしまった。

汚れていると、知られなければいい。

誰かがあたしに囁いた気がした。

仁の指が乳首を捉える。
まだ仁に跨がったまんま。
仁の屹立がお尻の辺りに当たってる。

「仁てさ、回復力早いよね」

茶化すけれど仁の指は止まらない。
ゆっくり仁が身体を起こしてきて向かい合う形になった。


乳首を弄られながらキス。
舌を出して嘗め合う。
ザラザラとした感触が気持ちいい。

「ん…」

鼻から抜けるように声が漏れる。

キスのやり方も仁に教わったようなものだ。

しばらく舌を絡めあって、唾液を交換するように。キスは続く。

離れたと思ったらまたくっついて。まるで磁石みたいに吸い付く。

気持ちいい。

しみじみ思ったところで仁の唇はあたしの身体へと下りて行った。

あたしの弱いところは仁が一番知っている。

まず鎖骨。
歯を立てられる。
痛いくらいが気持ちいい。

あたしの身体は少しMっ気があるみたい。

これも仁が発見した。

おへそから脇腹へ舌が這う。

「っふ…」

ここも弱い。

体勢を変えられて、うつぶせに寝かされる。

優しく指が撫でたと思ったら、それが舌に変わって、さすがに声を抑えられない。

「あ…」

腰を上げさせられて、後ろから指があたしのぬかるみに入ってきた。

「んー…っ」

仁の長い指があたしの奥を撫ぜる。

「仁…っ。もうきてよ」

「もう?早くね?」

からかうように笑われて恥ずかしいけれど、身体は疼いて仕方ない。

「さっきイッてないもん!後ろからきて」

甘えるように言うと、仁に腰を抱えられる。

くる。

張ったカリが中に入ってそれからゆっくりと挿入された。
仁の下生えがお尻に当たる。
最初はゆっくりと、あたしの身体を味わうように仁が腰を動かす。
次第にスピードをつけて出し入れが行われる。
肉同士がぶつかる音と粘膜が擦れ合う音が部屋に響く。
奥の奥まで届くバックがあたしは好きだった。

声は殺したまま、二人の息遣いだけが聞こえてくる。

「恵、イケそ?」

後ろから乳房を揉みながら仁が聞く。

「ぅんっ!…やだ!」

あたしは快感でわけが分からなくなっていた。

頭が真っ白になって。

あたしはイッた。

今度はつけてたゴム越しに仁が達したのに気付く。

しばらく繋がったままで、後ろからキスされる。
まるで慈しむように。

なんでだろ。

あたしたちは所詮セフレなのに。

胸に幸せっぽい感情が生まれる。

トモキの時とも違う感覚にあたしは正直戸惑っていた。

トモキに無性に会いたくなった。

別の男に抱かれた後なのに。

こんな風に思うのは初めてだった。


トモキ…会いたいよ。




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posted by 美咲 at 10:00| あたし達の場合 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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